口には、租借(ものを咬む)、嚥下(飲み込む)、発音などの重要な機能があるため、口の健康は生きていくうえでとても大切です。口の病気といえば、口内炎、歯周病、むし歯などが一般的ですが、口にもがん(口腔がん)が発生し、近年その数が増加していることはあまり知られていません。口腔がんは早期発見・早期治療によりほとんど障害を残さないで治療ができる病気ですが、進行したがんでは大がかりな治療が必要になり、食事や会話などの日常生活に大きな障害が生じます。 口の中は胃や肺などと違って直接目で見て触ることができるので、胃がんや肺がんに比べれば口腔がんは早期に発見しやすいはずです。にもかかわらず初期がんの状態で病院を受診する方が少ないのは、一般の方々の口腔がんに対する知識が乏しいことが原因と考えられます。
1)視診・触診 口腔がんの診断は視診と触診から始まります。典型的な口腔がんは、盛り上がったようなかたま りや、しこりを伴う潰瘍(粘膜表面がえぐれて欠損が生じた状態)です。その他に、粘膜が白くなっ たり赤味を帯びている状態もがんが疑われることがあります。
2)細胞診 視診・触診でがんが疑われた部位の表面組織を綿棒でこすりとり、顕微鏡で調べ診断の目安とし ます。
3)生検(病理検査) 視診・触診でがんが疑われた時、診断を確実にするための検査です。異常のある病変部を小さく 切り取り、その組織を顕微鏡で観察してがんかどうかを診断します。
4)CT(コンピュータ断層撮影)検査 口腔にX線をあてコンピューターを用いて処理し、内部構造を輪切りにした画像にします。
当歯科では、口腔がんと診断した場合治療できる大学病院等に紹介します。 参考までに治療法を紹介します。
T期 手術療法または放射線療法が単独で行われます。
U期 手術療法、放射線治療のどちらか、また両方が行われます。 場合により化学療法が追加されます。
V期 手術療法がおこなわれます。放射線治療や化学療法もよく併用されます。
W A〜C期(手術で切除可能ながん) 手術療法が行われます。放射線療法や化学療法もよく併用されます。
W A〜C期(手術で切除できないがん) 放射線療法と化学療法が行われます。場合によっては積極的な治療の代わりに緩和ケアを行うこ ともあります。